アスファルト製造現場で広く製造されている再生アスファルト合材。「アスファルト合材出荷量に占める再生アスファルト合材の比率は約75%に達している(2014年度)」というデータが公表されており、新規合材より低価格なリサイクル製品として重要な役割を担っていることがわかります。
(参考:土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)「再生合材に関する一検討」)
▲出典:国土交通省「道路に係る建設資材関係資料・データ」
一方で、再生合材は常に臭気問題と隣り合わせ。再生合材を加熱するとアスファルト成分や付着不純物が分解し、硫黄化合物、アルデヒド類、脂肪酸、石油由来炭化水素などの悪臭物質が発生することが実際の製造現場への適用でも確認されています。
再生アスファルト合材の悪臭は、
に繋がる可能性もある重要な課題です。
無臭元の『アスファルト用防臭剤』は、再生アスファルト合材の製造時における悪臭物質の発生を抑制するために開発されたもので、アスファルト製造工場が抱える臭気課題を低減する製品です。
本記事では、製品開発や特許取得に至るまでの経緯と、実際の導入事例についてご紹介します。
アスファルト用防臭剤
アスファルト工場管理者を悩ませる、再生アスファルト合材製造時に発生する臭気。
「悪臭防止法」などの法規制に基づく対策・管理を徹底していたとしても、感覚的な不快感が要因となり苦情が発生すると、近隣への影響を抑制するための対策が必要となります。さらに、場合によっては、自治体による指導・改善勧告などの対象となるケースもあります。
(参考:環境省「悪臭防止法パンフレット」、環境省「悪臭防止法の概要 | 大気環境・自動車対策」)
加えて、工場内における悪臭は職場の衛生環境や従業員の作業上の負担に影響を及ぼす可能性もあるため、「現場で発生する臭いに対策を講じたい」と考えている事業者の方も少なくないのではないでしょうか。
アスファルト工場における臭気対策の内容としては、汎用的な消臭剤の活用や燃焼炉での焼却による消臭対策が一般的ですが、新規に脱臭炉を導入する場合、導入の費用が高額であることやスペースの確保が必要となるため、ハードルが高いのが実態です。
そこで無臭元では、脱臭炉より遥かに低コストで導入でき、即応的に運用可能な専用消臭剤として、『アスファルト用防臭剤』を独自に開発しました。
『アスファルト用防臭剤』は、その名のとおりアスファルトの臭い対策に特化した顆粒タイプの消臭剤で、アスファルト関連の臭気対策の新しい選択肢として開発された製品です。とくに、再生アスファルト合材の製造時に発生する臭気の低減に有効に作用します。
本製品の主なメリットは以下のとおりです。
運用方法としては、防臭剤を再生骨材ドライヤーの前に投入することで再生アスファルト合材を加熱したときに出現する悪臭を抑制し、合材施工時にミキサーやダクトから排出される臭気を改善する効果があります。
道路工事などに使用するアスファルト合材の製造販売とリサイクル事業による再生合材・再生路盤材の製造販売・その他道路用資材の販売を手掛ける企業の製造工場にご協力をいただき、『アスファルト用防臭剤』の開発に取り組みました。製品化に至るまでに、実際の製造現場で効果検証を行いながら、改良を重ね、最終製品に仕上げたものを本番導入いただきました。
ここからは、製品開発のお話を交えつつ、実際の現場導入に至るまでの取り組みについてご説明していきます。
前述のとおり、再生合材を加熱・溶解する過程で発生する不純物が加熱時に分解され、不快な臭気が発生します。この時に発生する臭気が、アスファルト製造工場内の作業環境や近隣地域に影響を及ぼすことが懸念されていました。
アスファルトは、製造してから数時間以内に運搬して施工する必要があるため、製造工場は、住宅街に近いエリアに立地しているケースも少なくないのですが、本事例でご紹介するお客さま工場も住宅街に近いロケーションに位置していました。そういった事情から、とくに地域への配慮は操業の安定性の確保の観点からも重要なテーマとなっていました。
そして、お客さまから臭気対策についてご相談をいただいた際、あれこれ薬剤やアプローチ方法のご提案をさせていただくなかで、「臭気発生そのものを抑制する発生源対策」に強い関心をお寄せいただきました。
当時、無臭元の製品群には、アスファルト製造時に発生する悪臭に特化した消臭剤はありませんでした。しかし、本件についてはお客さまからの強いご要望に加え、課題解決に向けた協議・検討を何度も重ねるなかで、「発生源対策」というアプローチに大きな可能性を見い出しました。そうした背景から、お客さまのご期待に応えるべく、アスファルト用消臭剤の開発に挑戦することを決定し、製品開発がスタートしました。
製品開発のプロセスにおいては、排気ガス中に含まれるアルデヒド類の消臭など様々なアプローチを検討しましたが、そのなかで「酸化防止剤を用いたアスファルト成分の分解防止」がとくに有効であるという結論にたどり着きました。このことは、特許「アスファルト合材の防臭方法」技術内容にも記載のとおり、発生源対策としての有効性が裏付けられています。
お客さま工場への導入に際しては、実地試験を複数回行い、対策効果と最適な運用方法の検証を経て、本番導入に至りました。
本番導入に至るまでの実地試験の詳細について解説していきます。
『アスファルト用防臭剤』の添加方法ですが、既存の再生骨材ドライヤーの原料が流れるベルト上に自動投入設備を設置し、薬剤添加を行いました。
効果測定については、排気ダクトを流れる空気に含まれる臭気物質を定量的に計測し、数値化したデータの比較を行い検証しました。
実地試験の詳細については、以下のとおりです。
【実施目的】
再生アスファルト合材製造時の排気ダクト悪臭対策
【実施条件】
下図のとおり、約1ヶ月半の間に、4回に分けて実際の製造現場で適用し、効果を検証

まずは実際の現場を調査し、臭気発生源と影響範囲を特定しました。
今回対象となった悪臭の原因となる物質は、嗅覚閾値が1.0×10⁻⁴~1.0×10⁻⁶ppmと非常に低く、空気中にごく微量存在するだけでも人が臭いを感じ取りやすい特性があります。
現場で排気ダクト周辺の採取・分析を行ったところ、約1.0×10⁻²ppmが検出され、嗅覚閾値を大きく上回る濃度であることが確認されました。実際にも、ダクト周辺では明確に臭気が認識される状況でした。
再生アスファルト合材の臭気は、加熱ドライヤー内で再生骨材に付着したアスファルト成分が熱分解することで発生するため、「再生骨材ドライヤー入口付近で薬剤を添加すれば、発生源となる分解反応を抑制できる」という仮説を立てました。
また、臭気の主な排出点は排気ダクト出口であるため「薬剤投入前後で排気ダクトの悪臭物質に変化が出るであろう」という考えに基づき、検証方針を設定しました。
そのうえで、
という配置を定めて試験準備を進めました。

【薬剤添加方法】
添加装置からコンベアに向けて顆粒状の薬剤を定量落下させることで消臭剤を添加しました。添加後、排気ダクト出口にある排気ダクト側面フランジからガス分析用サンプリングパックに臭気を採取し、悪臭物質の数値化により効果を計測しました。

【臭気採取方法】
排気ダクト最終出口タラップにある排気ダクト側面フランジより臭気採取を実施しました。フランジを一部開放し、隙間に臭気採取用ホースを差し込み、サンプリングポンプに接続して排気ダクト内の臭気を吸引することで、ガス分析用サンプリングバッグに臭気を採取しました。
【評価方法】
採取した臭気に対して、検知感を用いた臭気分析を行い、『アスファルト用防臭剤』の効果を評価しました。

《第1回試験》
結果1
《第2回試験》
結果2中間評価の結果を踏まえ、添加量を下記のとおり調整。
《第3回試験》
結果3
《第4回試験》
結果4
薬剤量を最適化したうえで再測定を行い、臭気改善効果を繰り返し確認しました。
現場調査から最終評価に至るまで、無臭元の担当者がお客さまの工場に度々ご訪問させていただき、運用状況や薬剤効果の確認を実施し、運用条件の微調整を行いながら最終評価の実施に至りました。
実地試験を通じて、確認できた薬剤の適用結果は以下のとおりです(薬剤無添加時との比較)。
// 導入後のお客さまのお声
工場関係者からは以下のような評価をいただいています。
『アスファルト用防臭剤』の導入により「人の鼻でも臭いの改善を感知することができた」「以前より嫌な臭いがしなくなった」「従業員の作業環境が改善された」といった体感評価が寄せられており、現場でも臭気改善効果を実感いただいています。
実際の製造現場への適用を通じて、再生骨材に対する推奨添加率を決定します。導入現場ごとに試験を行い、状況に応じた適切な添加率の設定を行うことが望ましいですが、本導入事例では、添加率 0.05~0.10%(対再生骨材)が効果の安定性と運用負荷を両立する量であり、現場における適合性も高い値であることが確認されています。
『アスファルト用防臭剤』は薬剤による対策であるため、脱臭炉などの設備導入と比較して初期投資を大幅に抑えられるという利点があります。
一方、脱臭炉を導入する場合は大規模な設備投資が必要となり、導入後も燃料費・保守点検費用などランニングコストが発生します。さらに燃焼方式による二酸化炭素排出量の増加といった環境負荷にも留意が必要です。
消臭剤による臭気対策の場合も添加量に応じた年間のランニングコストが発生するため、中長期的な目線で臭気対策の方針を検討したうえで、適切な対策方法を選択することが望まれます。
本事例においては、大掛かりな設備導入が不要で導入負荷が低い点が評価され、消臭剤による臭気対策の導入判断に至りました。
アスファルト製造工場における臭気対策としては、脱臭炉を活用した燃焼消臭が有効です。しかし、脱臭炉の導入価格は数億円程度と言われており、高額であることや導入まで長期間を要します。
また、導入スペースの確保が障壁になったり、CO₂排出量が増加するというデメリットもあります。
その他の対策としては、排気ダクトから排出される臭気に直接消臭剤を噴霧する対策方法も一般的です。
本事例で紹介した無臭元の『アスファルト用防臭剤』は、再生アスファルト合材製造時に発生する臭気に特化した薬剤で、発生する臭気の原因物質の生成、そのものを抑制する新しいアプローチです。
通常の臭気対策としては、次の2つが一般的です。
無臭元が開発した『アスファルト用防臭剤』は、アスファルト加熱時に発生する悪臭物質の発生量を抑制する効果があり、合材そのものの臭気対策(= 発生源対策)に繋がるという独自のメリットがあります。
そのため、ミキサーや排気ダクトから排出される臭気が大幅に低減され、脱臭炉よりスピーディに、且つ、安価なコストで導入できます。脱臭炉を設置するスペースがない場合でも薬剤であれば対応が可能です。
特許情報に示されているとおり、酸化防止剤成分により熱分解反応を抑制することで、悪臭物質(低級アルデヒド類など)の生成量を低減できる仕組みが明確です。
この点は従来手法と比較して大きな差別化要素となっています。
「再生骨材ドライヤーに酸化防止剤を投入して防臭する」という臭気対策は無臭元独自の技術であり、協力企業を含む3社共同特許として運用されています。
『アスファルト防臭剤』による臭気対策アプローチは、特許に裏付けられた発生源対策技術であり、再生アスファルト合材の臭気対策に高い信頼性と再現性を提供します。
▲出典:特許情報プラットフォーム「アスファルト合材の防臭方法」
再生アスファルト合材の製造現場で、周辺環境への配慮や法令遵守、さらには作業環境の改善が求められるなか、臭気対策は重要な経営課題です。
『アスファルト用防臭剤』は従来の
といった対策とは異なり、アスファルト成分の加熱分解によって発生する悪臭物質の生成量を抑制する「発生源対策」であり、臭気発生自体を抑制・低減します。
といった特長を有する消臭剤であり、無臭元独自の臭気対策ソリューションを可能にします。
無臭元では、長年の臭気対策の実績と現場経験、技術力を活かしてお客さまの臭気課題に応じた最適なソリューションを提供しています。
現場調査から課題分析、対策提案、試験、導入・運用支援、効果検証まで現場の状況に向き合い、一貫してサポートする体制を整えています。
アスファルト製造工場で発生する臭気の課題でお困りの際は、お気軽にご相談ください。