アスファルト合材工場や道路工事現場における臭気課題は、周辺環境や地域との共生において避けては通れない重要なテーマです。高温で加熱されたアスファルトから発生する独特の石油臭は、住民からの相談や指摘につながることもあり、悪臭防止法によって規制されています。
令和5年度の悪臭に関する苦情総数は全国で11,735件でした。そのうち、悪臭防止法の規制地域内の工場・事業場に対するものは4,171件(全体の35.5%)、規制地域外の工場・事業場に対するものは1,434件(同12.2%)であり、工場・事業場関連の苦情は全体の約半数を占めています(参考:環境省「令和5年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について」)。アスファルト関連施設も例外ではなく、臭気対策は事業運営の安定においても重要です。
本記事では、アスファルト臭の発生要因から具体的な対策方法、規制への対応まで体系的に解説します。製造現場や工事現場の環境管理責任者の方々が、効果的な臭気対策を実施するための実践的な情報をお届けします。
アスファルトの臭気課題は、製造から施工まで幅広い範囲で発生します。高温で加熱されたアスファルトから発生する揮発性有機化合物(VOC)は、作業環境だけでなく、周辺環境への影響も想定されます。
近年では都市部での住工混在が進み、従来は問題にならなかったレベルの臭気でも苦情につながるケースがあります。企業の事業継続や社会的責任(CSR)の観点からも、積極的な臭気対策が求められる時代になっています。
ここでは、アスファルト臭の特徴と、なぜ対策が必要なのかを整理して解説します。。
アスファルト臭は、石油系炭化水素を主成分とする独特の刺激臭です。原油精製の残渣物であるアスファルトにはさまざまな有機化合物が含まれており、加熱により揮発して特有の臭気を発生させます。
主な臭気成分には以下のようなものがあります。
炭化水素類:石油系の刺激臭の主成分
硫黄化合物:腐卵臭を発し、不快感が強い
アルデヒド類:刺激性があり、目や喉への刺激をもたらす
芳香族化合物:甘い臭いを持つが、長時間の暴露で頭痛を引き起こすことがある
アスファルトは通常110〜140℃で施工され、製造時は140〜160℃程度で加熱されます(参考:一般社団法人 日本アスファルト協会)。加熱温度が高いほど、揮発性有機化合物(VOC)の発生量が増加し、臭気も強まる傾向があります。
とくに夏場の高温時や風向きによっては、臭気が遠方まで拡散し、広範囲に影響を及ぼす可能性があります。
近年、環境配慮とコスト削減の観点から、再生アスファルト合材の利用が急速に進み、アスファルト・コンクリート塊の再資源化率は99%以上(2018年度実績99.5%)と非常に高い水準となっています(参考:国土交通省「建設リサイクル推進計画2020」)。
一方で、再生アスファルト合材の製造では、新材に比べて強い臭気が発生する傾向があります。
主な要因は以下のとおりです。
既存舗装材の加熱による複雑な臭気成分の発生
再生用添加剤による新たな臭気成分の付加
製造温度が新材より高温になる場合がある
劣化したアスファルトからの揮発成分増加
再生合材の普及は資源循環型社会の実現に不可欠ですが、同時に臭気対策の重要性も高まっています。従来型の対策だけでは対応しきれないケースも考えられるため、より効果的な消臭対策の導入が求められます。
アスファルト臭気対策は、法令遵守と企業の持続的な事業運営の両面から欠かせない取り組みです。
悪臭防止法では、臭気指数による規制が設けられています。臭気指数の規制基準は自治体が地域の実情に応じて定めています(例:神奈川県は1種地域10、2種地域15)(参考:環境省「悪臭防止法の概要」、神奈川県「悪臭防止法の概要」)。
違反した場合は改善勧告や改善命令が出され、命令に従わない場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります(参考:悪臭防止法第24条)。
都市部では住宅地と工場が隣接するケースが多く、臭気苦情は企業イメージの低下や操業停止リスクにつながります。地域社会との良好な関係維持は、事業継続の重要な要素となっています。
労働安全衛生法では、硫化水素の管理濃度を1ppmと定めています(参考:作業環境測定基準)。アスファルト製造工場では、高温加熱の工程において揮発性有機化合物(VOC)や硫黄系ガスが発生する可能性があるため、作業環境の適切な管理が重要です。
また、道路施工現場においても、ダンプ荷下ろしや敷設作業の工程で臭気が拡散しやすく、周辺への配慮が求められ、現場の状況に応じた対応が必要です。
従業員の健康管理や快適な作業環境の確保は、生産性向上や人材確保にもつながるため、日常的なモニタリングや環境に配慮した消臭対策の導入が有効です。
アスファルト臭は製造から施工まで、さまざまな工程で発生します。効果的な対策を講じるためには、それぞれの発生源の特性を理解し、適切なアプローチを選択することが重要です。
ここでは、主要な発生源ごとに臭気の特徴と対策のポイントを解説します。
アスファルト合材工場では、複数の工程から臭気が発生します。それぞれの発生源には異なる特徴があり、対策方法も変わってきます。
主な発生源として以下が挙げられます。
骨材加熱ドラム:骨材を160~180℃で加熱する工程
アスファルトタンク:アスファルトを150~160℃で貯蔵
ミキサー:高温の骨材とアスファルトを混合
サイロ:製品を130~150℃で貯蔵
とくにミキサーから排出される高温排気ガスは、複合的な臭気成分を含み、工場臭気の主要な発生源となります。排気口の高さや吐出速度によって拡散状況が変わるため、適切な排気設計も対策の一要素です。(※温度レンジは配合や季節、中温化技術の採用により変動する場合があります。)
道路工事現場でも、アスファルトを高温状態のまま扱う必要があるため臭気が発生します。現場は、移動しながらの施工となるため、固定式の消臭設備は使いにくいことが多いという課題があります。
現場での臭気発生パターンには以下の特徴があります。
ダンプトラックからの荷下ろし時:密閉状態から開放される際に一気に臭気が放出される
フィニッシャーでの敷設時:表面積が増え、臭気が拡散しやすい
ローラー転圧時:圧力と熱で内部の揮発成分が押し出される
再生アスファルト製造では、通常のアスファルト製造とは異なる臭気が発生しやすい特徴があります。
再生骨材には劣化・酸化したアスファルトが付着しており、加熱により複雑な臭気成分が発生します。さらに、再生用添加剤として使用される再生用オイルや改質剤からも、独特の臭気が生じることがあります。
再生材の比率が高いほど臭気も強まる傾向があり、より効果的な消臭対策の導入が求められます。
適切な臭気管理を行うためには、現状を正しく把握し、法規制に適合していることを確認することもポイントです。悪臭防止法では、臭気指数規制と特定悪臭物質規制の2つの方式が定められています。
ここでは、それぞれの規制内容と測定方法について整理します。
臭気指数は、人間の嗅覚を用いて臭気の強さを数値化する方法です。臭気を段階的に希釈し、臭いを感じなくなる希釈倍数から算出されます。多くの自治体で採用されており、複合臭に対して有効な規制方式です。
規制基準は以下の3つに分類されます。
規制区分 | 測定場所 | 規制値 | 測定方法例 |
|---|---|---|---|
1号基準 | 敷地境界線上 | 臭気指数10~21 | 三点比較式臭袋法 |
2号基準 | 気体排出口 | 排出口高さにより算定 | 排出口試料採取法 |
3号基準 | 排出水 | 臭気指数26~31 | 排水試料採取法 |
(参考:環境省「悪臭防止法の概要」、神奈川県「悪臭防止法の概要」)
悪臭防止法では、22種類の特定悪臭物質について濃度規制が設けられています。規制値は自治体ごとに異なりますが、アスファルト関連で注意が必要な代表的物質と基準値の例は以下のとおりです。
物質名 | 規制値(敷地境界での例、ppm) | 臭いの特徴 |
|---|---|---|
硫化水素 | 0.02~0.2(例:神奈川県・横浜市等) | 腐卵臭 |
メチルメルカプタン | 0.002~0.01(同上) | 腐ったキャベツ臭 |
トルエン | 10~60(同上) | シンナー臭 |
キシレン | 1~5(同上) | ガソリン臭 |
スチレン | 0.4~2(同上) | 甘い刺激臭 |
(参考:環境省「特定悪臭物質の測定の方法」)
硫化水素は嗅覚閾値が0.00041ppmと非常に低く、極めて低濃度でも感知されるため、とくに注意が必要です。測定にはガス検知管や連続測定装置を使用し、定期的なモニタリングを実施することが推奨されます。
アスファルト臭気対策には、発生源や状況に応じたさまざまなアプローチがあります。効果的な対策を実施するためには、それぞれの方法の特性を理解し、現場の条件に適した組み合わせを検討・選択することが重要です。
ここでは、主要な対策方法について、具体的な適用方法と効果を解説します。
アスファルトに消臭剤を直接添加する方法は、臭気の発生を根本から抑制する効果的な対策方法です。製造時にアスファルトに混合することで、製造から施工まで継続的な消臭効果が得られます。
添加方法の一般的な条件イメージは以下のとおりです。
添加量:アスファルト量に対して少量添加
添加タイミング:アスファルトタンク投入、ミキサー投入、または搬送ベルト散布による添加
消臭メカニズム:揮発抑制/化学的中和/マスキング
効果持続時間:薬剤の種類や現場条件によって異なるが、一般的には製造から施工の工程にかけて効果を発揮
消臭剤は、臭気成分と化学反応を起こして無臭化する中和型と、臭気成分の揮発を物理的に抑制する封じ込め型などがあります。現場の臭気特性に応じて、適切なタイプを選択することが重要です。
既存の製造工程への導入も容易で、特別な設備投資が不要な点も大きなメリットです。ただし、アスファルトの品質への影響を事前に確認し、適切な添加量を守ることが必要です。
発生した臭気を空間で中和・分解する即効性のある方法です。工場内の作業環境改善から敷地境界での臭気低減、さらには工事現場での一時的な対応まで幅広い用途に対応できます。
噴霧方式には以下のような種類があります。
高圧噴霧:微細ミストで拡散性が高く、広範囲空間に適用
低圧噴霧:設備が簡易で低コスト、局所空間に適用
超音波噴霧:極微細粒子で浮遊時間が長く、室内空間に適用
可搬式噴霧:移動可能で柔軟な対応が可能、工事現場に適用
噴霧位置は、臭気発生源の風下側に設置することが基本です。工場では建屋の開口部や排気口付近、工事現場ではアスファルトフィニッシャーの周辺に設置することで効果的な消臭が可能な場合が多いです。
消臭剤の選定では、対象臭気との反応性・適合性に加え、作業者への安全性や環境への影響も考慮する必要があります。
大規模な臭気対策が必要な場合には、排気処理装置などの設備的な対策が検討されます。一般論としては、薬液洗浄装置(スクラバー)、活性炭吸着装置、燃焼脱臭装置、生物脱臭装置といった方式があります。
薬液洗浄装置(スクラバー):
硫黄系ガスやアンモニアに有効だが、大風量・高温排気が主体のアスファルト合材工場では適用に制約がある。
活性炭吸着装置:
低濃度のVOCに有効だが、粉じんやタールを多く含む排ガス環境ではコストや維持管理が課題となる。
生物脱臭装置:
低濃度・安定した組成の臭気には適しているが、アスファルト排気のような高温・複雑な成分には不向き。
燃焼脱臭装置(脱臭炉):
高い除去性能を持つが、初期投資・燃料コスト・CO₂排出の面で負担が大きい。
このように複数方式があるものの、実務では燃焼脱臭装置(脱臭炉)の導入例が多く、次いで噴霧などの対策が選択されるケースがみられます。
無臭元では、60年以上にわたり培った消臭技術をもとに、アスファルト臭気に対応したソリューションも提供しています。「1クライアント 1ソリューション」の理念のもと、お客さまの現場条件に最適な対策を設計・提案します。
アスファルト製造時に直接添加できるアスファルト合材用防臭剤を開発しています。再生アスファルト合材製造時に、再生骨材搬送ベルトで顆粒状薬剤を散布し、再生骨材と一緒にドライヤーで加熱される仕組みです。
実機試験(再生骨材配合70%条件)では、以下の効果が確認されました(対再生骨材 1.5kg/t 添加時):
低級炭化水素類:約60%削減
硫化水素:99%以上削減(1ppm → 0.01ppm未満)低級脂肪酸類:90%以上削減
硫化水素は嗅覚閾値が極めて低い物質ですが、規制値(0.02〜0.2ppm)を大幅に下回る水準まで低減しました。薬剤添加は既存のベルトコンベアに簡易な散布設備を設置するだけで導入可能で、大規模な設備改修は不要です。導入前には小規模試験を実施し、現場に最適な添加条件を確認することも可能です。
工場内や工事現場での即効性のある臭気対策として、噴霧用消臭剤も提供しています。アスファルト臭に適合した配合により、臭気の改善に寄与します。
また、焦げ臭対策には「無臭元バーントリフレッシュ」が効果的です。再生アスファルト製造時の複雑な臭気にも対応し、作業環境の改善に貢献します。
噴霧システムの設計から設置指導まで、トータルでサポートすることで、より高い効果を実現します。定期的な効果測定により、季節変動や製造条件の変化にも柔軟に対応可能です。
臭気問題の根本的な解決には、現状の正確な把握と適切な対策の選定が不可欠です。無臭元では、臭気調査から対策提案、効果検証までを一貫した伴走型のの支援を提供しています。
支援の流れは以下のとおりです。
豊富な実績にもとづくノウハウと、最新の測定・解析技術を組み合わせることで、お客さま固有の課題に対する最適解を提供します。
アスファルトの臭気の課題は、製造から施工まで多岐にわたり、対応には専門的な知識と経験が求められます。悪臭防止法による規制や周辺環境への配慮からも、効果的な対策を行うことは事業運営の安定の観点からも重要です。
本記事では、臭気の発生要因から具体的な対策方法まで解説しました。直接添加、空間噴霧、設備対策など、それぞれの方法には特徴があり、現場の条件に応じた適切な組み合わせを検討・選択することが大切です。
無臭元では、長年の経験と技術力を活かし、お客さまの臭気課題に応じた最適なソリューションを提供しています。現場調査から対策提案、導入、効果検証まで、一貫してサポートします。
アスファルト臭気でお困りの際は、豊富な実績と確かな現場力を持つ無臭元にご相談ください。