製紙工場といっても、印刷・情報・衛生などの紙(洋紙)と、段ボール原紙・紙器用の板紙では、原料構成や工程が異なり、排水の性状と課題も変わります。また、紙・板紙の製造には大量の水が必要となるため、用水の再利用にかかわる高度なリサイクル技術を誇る産業であることも特徴で、用水のリサイクルにおいても排水処理は極めて重要な工程となります。
環境規制の強化により、紙・パルプ業界も厳格な排水管理が求められているところですが、とくに、水質汚濁防止法や水質総量削減制度への対応、そして地域住民への配慮から臭気対策まで、対処すべき課題は多岐にわたります。
本記事では、製紙工場排水の特徴から環境規制、処理技術、そして効果的な改善アプローチまで、実務に役立つ情報を体系的に紹介します。
製紙工場の排水は、パルプ化・漂白・抄紙・脱インキなど工程ごとに性状が異なり、それぞれの特性理解が適切な処理の第一歩となります。
製紙工程から排出される排水には、繊維くずやサイズ剤などの薬品、有機性汚濁物質が多く含まれます。特徴として以下が挙げられます。
紙(洋紙)と板紙でも原料と工程が異なり、排水の組成や負荷が変わります。とくに板紙分野は古紙利用率が約93%と極めて高く、DIP(脱インキ)由来のインク粒子・界面活性剤・填料・微細繊維などが処理上のポイントになります。
紙パ系排水の主要な特徴の一つは、有機物負荷(BOD・COD)が工程によって高くなりやすいことです。化学パルプ化では木材由来のリグニンやヘミセルロースが溶解除去され有機負荷源となり、さらに漂白工程の排水は高COD・低生分解性になりがちです。
関連記事:COD(化学的酸素要求量)とは?測定方法と効果的な低減対策をわかりやすく解説
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これらの有機物は、次のような特徴を持っています。
有機物の種類 | 主な発生工程 | 処理上の課題 |
|---|---|---|
リグニン | 蒸解・漂白工程 | 難分解・色度の主要因。二次処理後も残留しやすい。 |
ヘミセルロース | 蒸解工程(前処理含む) | 脱アセチル化で酢酸等が生成。酸性〜中性系や酸生成環境ではpH低下要因(クラフト蒸解液では主にアセテート)。 |
抽出成分(樹脂・脂肪酸) | チップ処理・パルプ化工程 | 泡立ちや処理阻害の要因。 |
セルロース繊維 | 抄紙・脱水工程 | 懸濁物質として処理負荷を増大させる主因。 |
これらの有機物を効率的に除去するためには、物理的処理と生物学的処理を適切に組み合わせることが重要です。
製紙工場排水には、微細繊維や填料などの懸濁物質が大量に含まれています。
抄紙工程では、パルプ繊維の一部が流出し、また炭酸カルシウムやクレーなどの填料も排水に混入します。これらの懸濁物質は、配管の詰まりや沈殿槽での汚泥の過剰発生につながるため、一次処理での確実な除去が求められます。
懸濁物質の種類と特徴は以下のとおりです。
SS成分 | 除去方法 | 処理上の留意点 |
|---|---|---|
微細繊維(ファイン) | スクリーン・沈殿 | 再利用可能な場合は回収システムを検討 |
填料(炭酸カルシウム・クレー等) | 凝集沈殿・浮上分離 | pH調整により凝集効率が変化 |
パルプくず(粗大繊維) | スクリーン処理 | 定期的な清掃が必要 |
インキ粒子(DIPラインのある工場) | 浮上分離・凝集処理 | 界面活性剤の影響を考慮 |
関連記事:排水処理におけるSS(懸濁物質)とは?原因・除去方法・薬剤対策をわかりやすく解説
製紙工場では、各工程で酸性からアルカリ性まで幅広いpH領域の薬品を使用するため、排水のpHが大きく変動します。
蒸解工程では水酸化ナトリウムなどのアルカリを使用し、漂白工程では二酸化塩素や、過酸化水素を使用します。これらの薬品使用により、工程排水のpHは大きく変動することがあり、生物処理への影響を最小限に抑えるため、適切な中和処理が不可欠です。
pH変動による処理への影響として、活性汚泥中の微生物の活性低下、凝集剤の効果減少、設備の腐食促進などが挙げられます。安定した処理を維持するためには、流入調整槽での均一化と、自動pH調整システムの導入が効果的です。
リグニン由来の着色は、製紙工場排水の特徴的な問題のひとつです。
リグニンは褐色を呈する高分子化合物で、通常の生物処理では完全に除去することが困難です。とくにクラフトパルプ製造工程から排出される排水は、濃褐色を示し、放流先の河川や海域の景観を損なう可能性があります。
色度除去には、凝集沈殿処理、活性炭吸着、オゾン処理などの手法がありますが、それぞれに長所と短所があるため、排水の性状や処理目標に応じて最適な方法を選択する必要があります。
製紙工場の排水処理において、環境法規制への適合は事業継続の必須条件です。製紙工場の排水は水質汚濁防止法に基づき、生活環境項目(BOD・COD・SSなど)の基準を満たす必要があります。
水質汚濁防止法では、製紙工場に対して厳格な排水基準が設定されています(参考:環境省 一般排水基準)。
全国一律の排水基準として、以下の主な項目と基準値が定められています。
規制項目 | 排水基準値 | 測定頻度の目安 |
|---|---|---|
pH | 5.8以上8.6以下(海域以外の公共用水域に排出されるもの) 5.0以上9.0以下(海域に排出されるもの) | 連続測定 |
BOD | 160mg/L(日間平均 120mg/L) ※海域・湖沼以外に適用 | 1回/日以上 |
COD | 160 mg/L(日間平均 120 mg/L) ※海域・湖沼に適用 | 1回/日以上 |
SS(懸濁物質) | 200mg/L(日間平均 150mg/L) | 1回/日以上 |
n-ヘキサン抽出物質(鉱油類) | 5mg/L | 1回/月以上 |
n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類) | 30mg/L | 1回/月以上 |
窒素含有量 | 120mg/L(日間平均 60 mg/L) | 1回/週以上 |
りん含有量 | 16mg/L(日間平均 8 mg/L) | 1回/週以上 |
※本表の生活環境項目(BOD/COD/SSなど)の排水基準は、1日平均排水量50m³以上の事業場に適用されます(自治体の上乗せ有り)。測定・記録・保存義務は水濁法14条によりますが、具体の測定頻度は全国一律ではなく、自治体の指導・条例や許可条件で定められます。
これらの基準値を超過した場合、改善命令や操業停止などの行政処分を受ける可能性があるため、日常的な監視と管理が不可欠です。
閉鎖性水域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)に排水する事業場には、水質総量削減制度が適用されます。この制度では、濃度規制に加えて総量規制(COD・窒素[T-N]・りん[T-P])が課されます。
総量規制基準は、以下の計算式で算出されます。
総量規制基準値の算式:L=Σ(C×Q×10⁻³)(kg/日) C:業種・設置時期等に応じ知事が定める基準適用値(mg/L) Q:特定排出水量(m³/日) ※設置時期が新しいほど厳しいC値が設定される運用です。 |
都道府県や市町村では、地域の水環境保全のため、国の基準より厳しい上乗せ基準や横出し基準を設定している場合があります。
とくに注意すべき追加規制項目として、以下のようなものがあります。
これらの地域規制は随時改正される可能性があるため、定期的に最新情報を確認し、必要に応じて処理設備の改善や運転条件の見直しを行うことが重要です。
製紙工場の排水処理では、物理的・化学的・生物学的処理を組み合わせた多段階処理システムが一般的です。各処理法の特徴を理解し、排水の性状に応じて最適な組み合わせを選択することが、効率的な処理の鍵となります。
製紙工場では排水量が多いため、高負荷排水や再エネ回収の観点から嫌気処理の導入も進んでいますが、導入の可否は、有機負荷・温度・コストの観点で判断されるのが一般的です。
一次処理は、排水中の粗大な固形物や懸濁物質を物理的に除去する工程です。
スクリーン処理では、パルプくずや大きな繊維を除去します。回転式ドラムスクリーンや振動スクリーンが一般的に使用され、除去した固形物は脱水後、焼却処理や再利用されることもあります。
沈殿処理では、重力を利用して懸濁物質を沈降分離します。製紙工場では、処理水量が多いため、大型の沈殿池やクラリファイヤーが使用されます。沈殿効率を高めるため、以下の点に留意する必要があります。
処理方式 | 主な対象 | SS除去率の目安 | 特徴 / 適用ポイント |
|---|---|---|---|
粗目スクリーン/ドラムスクリーン | 粗大繊維・パルプくず | 粗大物のカット | 前段負荷低減が目的。定期清掃・目詰まり管理が必須。 |
一次沈殿(横流/円形/竪流クラリファイア) | 繊維片・ファイン | 40〜70%(BOD 20〜35%併除去) | 滞留時間・流速設計が要。返送泥管理で引きずり抑制。 |
傾斜板沈殿(ラメラ) | 微細繊維・フィラー | 70〜90% | 既設池の能力増強に有効。堆積泥の引抜計画を明確化。 |
加圧浮上(DAF) | インキ粒子・油分・微細SS | 80〜95%(条件次第で90%未満) | 凝集薬注・pH最適化が鍵。DIP/板紙系で特に効果的。 |
加圧浮上処理は、微細な気泡を利用して懸濁物質や油分を浮上分離する方法で、とくに板紙工場の脱インキ排水処理に効果的です。
関連記事:油分による排水処理トラブルとは?ノルマルヘキサン・臭気・負荷増への対応も
生物学的処理は、微生物の働きを利用して有機物を分解する、製紙工場排水処理の中核となる工程です。
活性汚泥法は最も広く採用されている処理方式で、好気性微生物により有機物を二酸化炭素と水に分解します。活性汚泥法を軸に、BOD85~95%除去を目安とします。
製紙工場では、以下のような変法が排水の特性に応じて選択されます。
処理方式 | MLSSの目安 (mg/L) | BOD除去率の目安 | 特徴 / 適用範囲 |
|---|---|---|---|
標準活性汚泥法 | 2,000〜4,000 | 85~95% | 最も一般的。大~中規模工場 |
長時間曝気法 | 3,000〜6,000 | 90~95% | 変動に強い。中~小規模工場 |
高負荷活性汚泥法 | 2,000〜4,000 | 80~90% | レトロフィット。用地制約に強い |
接触曝気法 | 1,500〜3,000(+担体上に生物膜) | 85~95% | 高F/M比原水の前処理に有効 |
三次処理は、二次処理で除去しきれなかった有機物、色度、栄養塩類などを除去する工程です。
凝集沈殿処理では、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)やポリ塩化アルミニウム(PAC)などの凝集剤を添加して、微細な懸濁物質や溶解性有機物を凝集させて除去します。製紙工場では、色度除去にも効果があるため、広く採用されています。
砂ろ過は、凝集処理後の微細なフロックを除去し、処理水の清澄度を高めます。定期的な逆洗により、ろ材の目詰まりを防止します。
膜処理技術も近年導入が進んでおり、MF(精密ろ過)膜やUF(限外ろ過)膜により、懸濁物質を完全に除去できます。さらに、RO(逆浸透)膜を使用すれば、溶解性物質も除去でき、処理水の再利用も可能となります。
活性炭吸着は、難分解性有機物や色度成分の除去に効果的です。粉末活性炭を凝集処理と併用する方法と、粒状活性炭塔を設置する方法があり、処理目標や経済性を考慮して選択します。
製紙工場の排水処理を効率的に運営するためには、設備の適切な設計だけでなく、日常の運転管理と最適化が重要です。ここでは、実務的な観点から、処理効率を高めるためのポイントを解説します。
効果的な処理フロー構築には、以下の5つのポイントを考慮する必要があります。
薬剤は排水処理において、即効性が高く、設備導入に比べて初期コスト・設置工期ともに抑えられる柔軟な対応手段です。とくに、処理負荷の急激な変動や、緊急対応が求められる現場においては、薬剤によるソフトな対応が現実的かつ有効な手段となります。
薬剤をより効果的かつ効率的に使用するには、排水の状態に応じた使用量の最適化が重要です。定期的な水質モニタリングにより排水性状の変化を把握し、必要に応じて薬剤の種類や添加量を調整することで、処理効率を高めながらコストパフォーマンスの最大化を図ることができます。
薬剤選定にあたっては、以下の点を考慮します。
薬剤の種類 | 主な用途 | 選定のポイント |
|---|---|---|
凝集剤(PAC、硫酸バンド) | SS・色度除去 | pH依存性、汚泥発生量を考慮 |
高分子凝集剤 | 汚泥脱水、凝集補助 | 分子量、イオン性を排水性状に合わせて選択 |
pH調整剤(硫酸、苛性ソーダ) | pH調整 | 緩衝能、塩類の蓄積を考慮 |
消泡剤 | 泡立ち防止 | 生物処理への影響を確認 |
栄養剤(窒素、りん) | 生物処理の活性維持 | BOD:N:P=100:5:1を目安に調整 |
排水性状が大きく変動する事業場や、季節・製造工程の変化により処理条件が変わる場合にも、薬剤は設備のように固定的でなく、状況に応じた柔軟な対応が可能です。こうした運用性の高さも、薬剤処理の大きな利点です。
安定した排水処理のためには、日常的な監視と迅速な異常対応が不可欠です。
主な管理項目と測定頻度を以下に示します。
管理項目 | 測定頻度 | 管理値の目安 | 異常時の初期対応 |
|---|---|---|---|
流入水量・水質(pH・BOD or COD・SS) | 連続+日次記録 | 設計値の±20%以内 | 調整槽での滞留時間延長、希釈、負荷分散 |
曝気槽DO | 連続測定 | 1.5〜2.0 mg/L(運用許容1〜3) | ブロワ風量・弁開度調整、散気装置の点検 |
MLSS | 日次 | 2,000~4,000mg/L (長時間曝気:3,000〜6,000 mg/L) | 余剰汚泥引き抜き量の調整 |
SV30(30分間沈殿率) | 日次 | 20~40%(=200〜400 mL/1L) | 返送汚泥率・曝気・栄養の再調整 |
処理水質(BOD・COD・SS・色度) | 日次以上 | 排水基準の80%以下 | 凝集剤添加、活性炭投入(必要時)、運転条件の是正 |
異常時の対応手順としては、まず異常の早期発見が重要です。オンライン計器による連続監視や、定期的な巡回点検により、異常の兆候を見逃さないようにします。
異常が発見された場合は、原因の特定を迅速に行います。流入水質の変化、設備の故障、操作ミスなど、考えられる原因を系統的にチェックします。応急処置として、流入制限、希釈、薬剤添加などを実施し、排水基準の遵守を最優先とします。
その後、恒久対策を検討し、同様の異常が再発しないよう、設備改善や運転方法の見直しを行います。すべての対応を記録し、ノウハウとして蓄積することも重要です。
製紙工場では、排水処理や汚泥の保管状況によって硫化水素などの臭気が発生し、近隣住民からの苦情につながることがあります。とくに、活性汚泥処理施設やペーパースラッジの貯留場所は発生源になりやすく、工場の社会的責任として適切に対処する必要があります。
製紙工場の排水処理施設における臭気発生の主な原因は、嫌気状態での有機物分解による硫化水素の発生です。
硫化水素は、硫酸イオンが細菌の働きによって還元される過程で生じます。とくに、以下の条件が重なると発生しやすくなります。
また、製紙特有の工程で用いられる硫黄化合物(亜硫酸系など)や、凝集剤として使用される硫酸バンドが、条件次第では硫化水素の発生原因となることがあります。
臭気物質(硫化水素)の発生濃度と人体への影響目安を以下に示します。
硫化水素濃度 | 人体への影響 |
|---|---|
10ppm | 目の粘膜刺激を感知 |
20~30ppm | 嗅覚疲労、咳が起こる |
50ppm | 結膜炎、目の痒み、痛み、視野のゆがみが増す |
100~300ppm | 長期曝露により気管支炎、気管支肺炎、肺胞の損傷が起こる。 48時間(100ppm)、1時間(300ppm)で肺水腫による窒息死 |
350~600ppm | 1時間(300ppm)、30分(600ppm)で生命の危機 |
700ppm | 硫化水素が分解されず脳神経に直接作用し、直ちに呼吸麻痺、失神を起こす |
1000ppm | 昏倒、呼吸停止、死亡 |
5000ppm | 即死 |
安全対策として、計測器の使用・保護具の着用・立入管理を徹底し、においだけで判断しないことが重要です。
関連記事:硫化水素の臭いの特徴は?危険性や臭気対策、測定方法も紹介
製紙工場では、脱水したペーパースラッジを焼却処理するまでの間、一時的に貯留する必要があります。とくに、焼却炉の定期検査時には、2〜4週間程度の長期貯留となることがあり、この期間中の臭気対策が重要になります。
ペーパースラッジは、含水率60〜70%程度で、有機物を多く含むため、積み置き中に嫌気状態となりやすく、硫化水素やメルカプタン類などの悪臭物質が発生します。夏季の高温期には、とくに臭気が強くなる傾向があります。
効果的な対策として、以下の方法があります。
硫化水素は臭気を伴うだけでなく、作業者の安全や設備・構造物の劣化を引き起こす可能性があるため、厳格な管理が不可欠です。労働安全衛生法に基づく「作業環境評価基準」では硫化水素の管理濃度を1ppmに引き下げて定めており、現場ではこの濃度を基準に作業環境測定の実施が義務付けられています。
一方、酸素欠乏症等防止規則では、酸素濃度を18%以上、かつ硫化水素濃度を10ppm以下に保つ換気措置が義務付けられています。
設備への影響として硫化水素は金属(とくに鉄・銅)を腐食させやすく、コンクリートも硫酸生成による劣化を受けるため、防食対策が必要です。
密閉空間での作業時は、とくに注意が必要で、作業前の酸素・硫化水素濃度の測定、強制換気の実施、監視人の配置、呼吸用保護具の準備と使用、緊急時の救助体制をあらかじめ整え、臭気の強弱だけで判断せず、安全管理手順を遵守してください。
製紙工場の排水処理では、既存設備を活かしながら処理性能を底上げすることが重要です。ここでは、無臭元の技術と製品を活用した実践的な改善方法を紹介します。
メルトラーゼは、活性汚泥の微生物バランスを整え、はたらきを高めることを目的とした製剤です。既存の生物処理に追加して用いるだけで、次のような改善が期待できます(※いずれも目安で、原水や運転条件により効果は変動します)。
機能 | 具体的な効果 |
|---|---|
有機物分解の促進 | BOD・COD除去率の改善 |
汚泥発生量の抑制 | 余剰汚泥発生量の削減 |
沈降性の改善 | SVIの適正化、バルキングの抑制 |
臭気の低減 | 嫌気化に伴う硫化水素などの発生抑制 |
処理の安定化 | 負荷変動への対応力向上 |
製紙特有の難分解性物質(リグニンなど)が含まれる場合でも、接触時間の確保・栄養バランスの是正と合わせて適用することで、分解を促進を後押しします。
投入方法は簡単で、曝気槽や調整槽などに直接添加するだけです。効果の現れ方は段階的で、おおむね2〜4週間で変化が見え始めるのが一般的な目安です(※施設条件により変動します)。継続使用により安定した処理が可能となります。
メルトラーゼと循環運転(処理水の一部を前段へ戻す運用)を組み合わせることで、さらなる処理効率の向上が期待できます。
循環運転とは、処理水の一部を曝気槽の前段に返送する運転方法で、以下のメリットがあります。
循環により槽内にムラなく分散されるため、メルトラーゼの効果の立ち上がりと持続にもプラスに働きます。循環率は小さく始めて段階的に最適化してください。
製紙工場では、原料切り替えや設備トラブルなどにより、排水性状が急激に変化することがあります。このような緊急時には、即効性タイプの「メルトラーゼK-S」による対応が有効です。
メルトラーゼK-Sは、以下の特徴があります。
代表的なトラブル事例と対応例を以下に示します。
トラブル事例 | 原因 | メルトラーゼK-Sによる対応 |
|---|---|---|
処理水質の急変(BOD/COD上昇) | 高濃度排水の流入 | 適量を即座に添加し、調整槽で平準化 |
バルキングの発生 | 糸状性細菌の異常増殖 | 少量を連日添加し、SVIの回復を待つ |
二次沈殿での汚泥流出 | フロックの弱化・沈降不良 | 添加+返送率の見直し、DO・栄養の再調整 |
泡の大量発生 | 界面活性剤の流入 | 添加+必要に応じ消泡剤を最小量で併用 |
臭気の発生 | 嫌気化・滞留増 | 添加+曝気強化/撹拌で嫌気域を解消 |
運用のポイントとして、緊急投入時は原因の切り分け(流入・DO・栄養・返流水)と運転条件の是正とセットで実施してください。小スケールで効果と最適量を確認し、過剰投与を避けるのが基本です。
製紙工場では、年に数回程度の定期検査(SD:シャットダウン)のため計画停止を行います。停止期間は内容により異なりますが、一般的には約7〜14日が目安で、設備更新や複数工事が重なる場合は2〜3週間、まれに4週間前後となる例もあります。このSD期間中の排水処理設備の管理は、再立ち上げ時の処理の安定に大きく影響します。
SD期間中の主なリスクは以下の通りです。
無臭元のSD対策プログラムでは、以下の対策を提案しています。
①SD前の準備(1~2週間前)
②SD期間中の管理
③再立ち上げ(基本の投入タイミング)
上記の準備・管理・再立ち上げ手順により、立ち上げ期間の短縮と早期安定化に寄与します(最終的な立ち上がり時間は原水・設備・運転条件に左右されます)。
活性微生物製剤や新技術を導入する際には、事前の検討と段階的な適用が基本です。
導入前の確認事項として、以下の項目を整理します。
検討項目 | 確認内容 | 評価方法 |
|---|---|---|
現状の課題 | 処理水質、汚泥発生量、臭気など | 過去1年間のデータ分析 |
処理目標 | 規制値、社内基準、改善目標 | 関係部署との合意形成 |
設備条件 | 曝気槽容量、曝気能力、汚泥処理能力 | 設備診断、能力計算 |
運転条件 | MLSS、SRT、F/M比、返流水など | 現状分析と最適レンジの設定 |
経済性 | 導入コスト、運転コスト、削減効果 | 費用対効果の試算 |
導入プロセスは、①ラボ試験→②パイロット→③実機試験運転→④本格導入の順で段階的に進め、小さく検証してから広げる方針を徹底します。導入後は、定期モニタリング(pH・DO・SVI・BOD/COD・返流水など)で効果を確認し、必要に応じて薬量や運転条件を調整します。導入支援とともに最適な運用方法を確立することが成功の鍵です。
製紙工場の排水処理は、大量の用水を使用し、多様な汚染物質を含むという特性から、高度な技術と経験が求められる分野です。環境規制の強化、処理コストの削減、臭気問題への対応など、解決すべき課題は多岐にわたります。
無臭元は、60年以上にわたる水処理・消臭技術の実績をもとに、紙・パルプ業界特有の課題に対して最適なソリューションを提供しています。活性微生物製剤「メルトラーゼ」シリーズをはじめとする各種製品と現場に精通したノウハウにより、既存設備の性能を最大限に引き出し、安定運転を後押しします。
無臭元の強みは、製品のご提供にとどまらず、現場状況の確認・運転条件の見直し・トラブル時の迅速なサポート・継続的な改善提案まで一貫して伴走支援させていただくことです。紙・パルプ工場の排水処理でお困りの際は、ぜひ無臭元へご相談ください。豊富な実績と確かな技術力で、お客さまの課題解決をご支援いたします。