「排水処理施設で油分によるトラブルが発生している」
「ノルマルヘキサン値が基準値を超えてしまい、改善命令を受けた」
「排水中の油分がスクリーンに詰まって、処理が止まってしまった」
工場から排出される油分を含む排水は、排水処理施設にさまざまなトラブルを引き起こす要因です。法令で定められた排水基準をクリアするだけでなく、悪臭の発生や曝気槽への負荷増大といった実務的な問題にも対応しなければなりません。
とくに近年では、環境規制の強化により、排水中の油分(ノルマルヘキサン抽出物質)に対する基準値が厳しくなっています。基準値を超過すれば行政指導の対象となり、最悪の場合は操業停止命令を受ける可能性もあります。
この記事では、油分による排水処理トラブルの原因や影響、具体的な対策方法、そして実際の対策事例まで詳しく解説します。油分による排水処理トラブルを解決し、安定した処理を実現するための情報をお届けします。
排水に含まれる油分は、見た目の濁りや水質悪化だけでなく、排水処理システム全体に深刻な影響を及ぼします。活性汚泥法などの生物処理では、微生物の代謝阻害や泡・浮遊物の形成など、処理能力そのものを損なうトラブルが多発します。
油分は排水処理の主流である活性汚泥法に対して、以下のような深刻な影響を与えます。
油分による生物処理への影響の例は以下の通りです。
とくに問題となるのは、油分が曝気気泡界面に集積する現象です。油分は汚泥フロックと空気の中間の疎水性を示すため、曝気気泡の周りに油分が集まり、それをフロックが取り囲んで破泡しにくい安定気泡が形成されます。
この結果、散気効率が低下し、酸素供給が追いつかなくなることで、処理機能が急激に悪化します。最悪の場合、沈殿池からスカムが流出し、放流水質基準を満たせなくなる可能性があります。
ノルマルヘキサン抽出物質は、水質汚濁防止法により「油分」を規制する項目として定められており、鉱油類(潤滑油、切削油などの鉱物油)と動植物油脂類(食用油脂、乳製品など)に分類されます。
ノルマルヘキサン抽出物質の排水基準は以下の通りです。
項目 | 一律排水基準 |
|---|---|
鉱油類含有量 | 5mg/L以下 |
動植物油脂類含有量 | 30mg/L以下 |
この基準値は全国一律の基準ですが、都道府県によってはさらに厳しい上乗せ基準が設定されている場合があります。また、下水道に放流する場合は、下水道法による基準も適用されるため注意が必要です。
基準値を超えると改善勧告・改善命令の発令、罰則金の支払いなどが科されます。とくに注意すべきは、継続的な違反です。改善命令に従わない場合は、最終的に操業停止命令が下され、企業活動に致命的な影響を与える可能性があります。
油分による排水トラブルは、以下のようなさまざまな業種で発生しています。
これらの施設では、油分の種類や濃度、発生パターンが異なるため、それぞれに適した対策が必要となります。こうした油分トラブルに対しては、単に除去を行うだけでなく、油分を安定的に分散させ、事前に処理負荷を軽減するアプローチも有効です。
無臭元では、油分処理剤「無臭元OL-H2」を用いた現場導入実績があり、処理機能の安定化や臭気対策にも寄与しています。
排水処理において適切な対策を講じるためには、まず油分の種類と性質を理解することが重要です。油分の種類によって処理方法も異なるため、正確な把握が不可欠です。
排水に含まれる油分は、大きく動植物油脂と鉱物油に分類されます。それぞれ性質が大きく異なるため、処理方法も使い分ける必要があります。
以下に動植物油脂と鉱物油の比較する表を参考にしましょう。
項目 | 動植物油脂 | 鉱物油 |
|---|---|---|
主な発生源 | 食品工場、飲食店 | 機械工場、ガソリンスタンド |
生分解性 | 比較的分解しやすい | 難分解性 |
温度特性 | 低温で固化しやすい | 温度による変化少ない |
比重 | 水より軽い(0.9前後) | 水より軽い(0.8前後) |
処理方法 | 微生物処理が有効 | 物理的・化学的処理が主体 |
環境への残留性 | 少量であれば水処理が可能 | 水処理センターでは処理不可能 |
動植物油脂は温度により固化しやすいという特性があり、配管やグリストラップで固まって閉塞の原因となります。一方、鉱物油は微量でも強い臭気を発生させ、処理が困難という問題があります。
なお、動植物油脂は比較的生分解されやすいものの、濃度が高い場合はそのまま生物処理工程に流すと処理負荷が増大するため、浮上分離や分散処理といった前処理を行ったうえで導入するのが一般的です。
油分は排水処理施設だけでなく、配管系統にもさまざまなトラブルを引き起こします。
| トラブル区分 | 主な現象 | 発生要因・結果 |
|---|---|---|
配管閉塞 | 油脂の固化により付着・閉塞 | 特に冬場や長距離配管で顕著 |
ポンプ故障 | インペラーへの油付着・軸劣化 | 保守頻度・交換コスト増 |
悪臭発生 | 油分腐敗による硫化水素など発生 | 苦情・環境負荷の増加 |
スクリーン詰まり | 油と固形物の付着・析出 | ドラムスクリーン停止要因に |
処理能力低下 | 処理効率が30~50%低下 | 負荷集中時に致命傷になる |
脱水不良 | ケーキの含水率が上昇 | 処理コスト・搬出量増 |
これらのトラブルは相互に関連しており、一度発生すると連鎖的に悪化する傾向があります。早期の対策が重要となる理由がここにあります。
排水中の油分に対して適切な処理を行うには、まず法規制を正しく理解した上で、排水性状に応じた対策方法を選択することが重要です。
水質汚濁防止法では、事業場から公共用水域に排出される油分に対し、「ノルマルヘキサン抽出物質」として以下の一律排水基準が定められています。
| 油種 | 排水基準値 |
|---|---|
鉱油類 | 5 mg/L 以下 |
動植物油脂類 | 30 mg/L 以下 |
ただし、これらの基準は、1日あたりの排水量が50m³以上の特定事業場に適用されます。違反した場合には、以下のような行政処分の対象となる可能性があります。
継続的な違反や命令への不履行が続いた場合、操業停止命令や事業者名の公表といった、事業活動への重大な影響が生じる可能性もあります。
油分の性状(浮遊性/乳化状態など)に応じて、物理的処理・化学的処理・生物学的処理を適切に組み合わせることが効果的です。
物理的処理法は、油と水の比重差や性質の違いを利用して分離する方法です。前処理として用いられることが多く、以下の手法があります。
【自然浮上分離法】
【加圧浮上法(DAF)】
化学的処理法は、化学薬品を使用し、油分の凝集や分散を促して、除去効率を高める方法です。
【凝集処理】
【油分処理剤の活用】
生物学的処理法は、油分を分解可能な能力の微生物を活用し、環境負荷を抑えながら処理を行う方法です。活性汚泥法などの生物処理において、適切な運転管理や微生物環境の維持ができていれば、動植物性油脂を中心とした油分の分解処理が可能です。
また、処理の安定化を目的として、処理層の微生物環境を整えるための活性微生物製剤などを活用するケースもあります。これにより、フロック形成や沈降性の改善、油分分解の効率向上などが期待できます。
ただし、処理効果の発現には、一定期間を要することもあり、即効性が求められる場合も含めて、他の方法との併用が推奨されます。
実際の現場では、複数の処理方法を組み合わせることで、より効果的な排水中の油分対策を実現しています。ここでは、無臭元が手がけた具体的な対策事例を紹介します。
【課題】 マンホール内に流入する排水中の油脂分がフロートに付着し、誤作動を引き起こす問題が発生していた。
【対策内容】
【効果】
薬剤添加前は槽内全体に油の付着が目立っていましたが、添加期間中はフロート及び側壁への油脂の付着は微量となり、管理上のトラブルが大幅に減少しました。
【課題】 合併浄化槽汚泥の増加に伴い、汚泥中のノルマルヘキサン抽出物が上昇。油の析出によりドラムスクリーンが目詰まりし、処理能力が8m³/h→4m³/hに低下していた。
【対策内容】
【効果】
この事例では、油分処理剤の使用により、設備の大規模な改修なしに処理能力を大幅に改善することができました。
排水処理における油分トラブルは、処理施設の機能低下だけでなく、法令違反のリスクも高まります。
無臭元は、60年以上にわたる水処理薬剤の開発・製造実績を持ち、油分トラブルへの対応に特化したソリューションも数多く提供してきました。
無臭元の主力油分対策製品である「無臭元OL-H2」は、スクリーンや排水管、排水溝に付着した油分を溶解・分散化することで、処理負荷を大幅に軽減する油分処理剤です。
無臭元OL-H2の特長は以下の通りです。
無臭元は、全国3,000箇所以上の下水処理場、し尿処理施設、各種工場などの排水処理施設の課題解決を支援してきた実績があり、水処理の状態に関する多角的な調査・分析による要因の特定を行い、課題ごとのソリューションを提供しています。
油分による排水処理トラブルでお困りの際は、ぜひ無臭元にご相談ください。豊富な経験と技術力に基づき、お客さま施設ごとの排水特性に応じた最適な処理方法をご提案し、現場の安定的な運転をサポートします。