タイヤ製造工場などから発生するゴム特有の臭いは、単なる不快感にとどまらず、環境問題としての近隣住民への影響や、労働安全衛生の観点から従業員への影響といった複数の側面で課題となります。
本記事では、タイヤ・ゴム工場で発生する臭いの正体から対策方法まで情報を整理します。臭気トラブルの解決に向けて、原因の理解から効果的な対策の実施まで、段階的にみていきましょう。
タイヤ製造における臭気問題を理解するには、まず臭いの発生メカニズムと主要な臭気成分を把握することが重要です。タイヤ工場特有の臭いは、天然ゴムや合成ゴムを加工する過程で、原料に含まれる化合物が熱や化学反応により変化することで発生します。
とくに、ゴムの弾性や耐久性を高めるための加硫工程では、硫黄を使用することから硫黄系の臭気(硫化水素、メルカプタン類など)が強く発生し、これがタイヤ工場の代表的な臭いの原因となっています。また、混練工程での発熱や成形工程での加熱により、VOC(揮発性有機化合物)を含む様々な有機系臭気が放出され、複合臭を形成します。
タイヤ製造では、ゴム特有の臭気に加え、加工時の焦げ臭など様々な臭気が発生します。
主な臭気成分としては、
などが挙げられます。
これらの臭気成分は複合的に作用し、タイヤ工場特有の臭いを形成します。とくに硫化水素は嗅覚閾値が極めて低く(代表値 0.00041 ppm)、微量でも強い悪臭として認識されます。また、季節や気象条件によっても臭気の拡散状況は変化し、夏場の高温時や風向きによっては、より広範囲に臭気が届きやすくなることも考慮する必要があります。
加硫工程は、タイヤ製造において最も強い臭気が発生する工程のひとつです。ゴムに硫黄を加えて加熱する過程で、硫化水素(腐卵臭)、メルカプタン類(腐ったキャベツのような臭い)などの硫黄系化合物が発生します。
混練工程では、ゴム原料と配合剤を混ぜ合わせる際の発熱により、低級脂肪酸(酸臭)、アルデヒド類(刺激臭、焦げ臭)、芳香族化合物(溶剤臭)などの有機系臭気が発生します。
これらの臭気は、温度が上昇するほど発生量が増加する傾向があり、局所排気装置の設置など適切な対策が必要となります。
タイヤ工場から発生する臭気は、単なる不快感にとどまらず、近隣からの苦情や環境規制対応の対象となることがあります。
ここでは、臭気がもたらす影響について詳しくみていきましょう。
悪臭に関する苦情は、環境問題の中でもとくに身近で切実な問題です。環境省の調査によると、令和5年度の悪臭苦情件数は全国で11,735件にのぼり、そのうち工場・事業場に関連する苦情は4,171件と全体の約35%を占めています(参考:環境省「令和5年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について」)。
タイヤ工場における臭気苦情の特徴として、以下のような点が挙げられます。
苦情の要因 | 具体的な内容 |
|---|---|
臭気の種類 | 硫黄臭、ゴム臭、焦げ臭など複合的な臭い |
発生時間帯 | 主に日中の操業時間帯、とくに加硫工程の稼働時 |
影響範囲 | 風向きにより数百メートルから数キロメートルに及ぶことも |
季節的要因 | 夏場の高温時に苦情が増加する傾向 |
悪臭防止法では、事業場の敷地境界線における臭気指数や特定悪臭物質の濃度について規制基準が定められており、これらの基準を超過した場合、改善勧告や改善命令の対象となります。
各自治体が定める基準に適合することが求められるので、事業場が立地する地域の規制を確認し、適切に対応することが必要です。
タイヤ工場の臭気は、そこで働く従業員の健康と労働環境にも影響を与えます。長時間の臭気曝露は、身体的・心理的な様々な症状を引き起こす可能性があります。
従業員への影響は、以下のような形で現れることがあります。
労働安全衛生法では、事業者は労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じることが義務付けられており、作業環境測定の実施や適切な換気設備の設置、必要に応じて保護具の着用などの対策が求められます。
また、臭気による不快感は従業員のモチベーション低下につながり、結果として生産性の低下や品質管理の問題にも発展する可能性があるため、作業環境の改善は経営面からも重要な課題となります。
タイヤ工場の臭気対策は、発生源での対策から排気処理まで、総合的なアプローチの検討が必要です。可能な臭気対策の中から、より効果的な臭気低減の施策を実行することがポイントです。
対策を検討する際は、臭気の発生状況、設備の制約、コスト、そして既存の製造プロセスへの影響を総合的に評価し、最適な方法を選択することが重要です。
発生源での対策は臭気低減に有効ですが、製造工程への介入は製品品質への影響リスクもあるため、慎重な検討が必要です。原材料の見直しや温度管理の最適化などの改善策は考えられますが、製造条件の変更は製品規格への適合性や生産効率への影響を十分に検証する必要があります。
そのため実際には、製造工程そのものを大きく変更することは困難な場合が多く、一般的には、製造工程の外側で行う対策(局所排気・排気処理・消臭剤の活用など)が実務的で効果的な選択肢となります。
局所排気装置は、臭気の発生源近くで直接捕集することで、工場内外への拡散を防ぐ効果的な対策です。タイヤ工場では、とくに加硫工程や混練工程の装置上部に設置されることが多く、適切に設計された局所排気システムは、作業環境の大幅な改善につながります。
効果的な局所排気システムの設置には、以下のポイントが重要です。
局所排気で捕集した臭気は、各自治体が定める基準(敷地境界=臭気指数、排出口=臭気濃度や特定悪臭物質濃度など)に適合していることを確認のうえ、大気放出する必要があります。
タイヤ工場の臭気は複合臭気であり、設備投資を伴うハード対策だけでは対応が難しいケースも想定されます。そのため、薬剤による臭気対策は初期対応として実装しやすい有効な方法です。
タイヤ工場の臭気に適した消臭剤の選定においては、以下の要素を考慮する必要があります。
消臭メカニズムとしては、化学反応による中和、物理的な吸着、感覚的中和などがあり、タイヤ工場の複合臭気に対しては、これらを組み合わせたアプローチが効果的です。
消臭剤の使用方法としては、たとえば、排気ダクト内への直接噴霧、作業場内への空間噴霧、敷地境界付近での噴霧などがあり、臭気の発生状況や対策目的に応じて使い分けることが重要です。
排気処理装置は、局所排気で集めた臭気を処理するための設備で、高い除去効率が期待できる一方、設備投資や運転コストが必要となります。タイヤ工場で使用される主な排気処理装置を比較すると、以下のようになります。
処理方式 | 原理 | 初期コスト | 運転コスト | 除去効率 | 適用条件 |
|---|---|---|---|---|---|
活性炭吸着 | 物理吸着 | 中 | 高(交換費用) | 中~高 | 低濃度、小風量 |
燃焼脱臭 | 熱酸化(酸化分解) | 高 | 高(燃料費) | 高 | 高濃度、可燃性 |
洗浄塔 | 化学吸収 | 中 | 中(薬品費) | 中 | 水溶性臭気 |
生物脱臭 | 微生物分解 | 低~中 | 低 | 中 | 低濃度、常温 |
各方式にはそれぞれ長所と短所があり、処理対象の臭気成分、風量、濃度、設置スペース、予算などを総合的に評価して選定する必要があります。たとえば、活性炭吸着は汎用性が高い一方、高湿度・高濃度では効率低下が避けられません。燃焼脱臭は高効率ですがコストが大きく、安全管理も重要です。
前処理と組み合わせた効率的な運用 多くの工場では、排気処理の前段で消臭剤を噴霧し、臭気濃度を低減させてから処理装置で仕上げる方法が採用されています。これにより、処理効率が向上し、運転コストの削減にもつながります。 |
実際のタイヤ工場では、前述した各種対策を組み合わせて、効果的な臭気対策を実現しています。単一の対策では限界があることから、発生源の特性や工場の状況に応じた複合的なアプローチが重要です。
ここでは、消臭剤を中心とした実践的な対策事例について、具体的にみていきましょう。
タイヤ製造工場では、消臭剤による対策が効果を上げています。とくに、排気ダクトへの消臭剤噴霧装置の導入は、既存設備への影響を最小限に抑えながら導入できる即効性のある実用的な方法です。
無臭元の噴霧用消臭剤は、タイヤ工場の臭気対策に適した製品として、以下のような特徴を持っています。
実際の導入例では、排気ダクト内に消臭剤を噴霧することで、排出口での臭気濃度を大幅に低減させることに成功しています。噴霧量や噴霧位置の最適化により、消臭剤の使用量を抑えながら高い効果を維持することが可能です。
タイヤ製造での臭気対策として排気系統での対策が効果的です。実際の対策としては、局所排気による臭気の捕集と、排気ダクト内への消臭剤噴霧を組み合わせることで、製造工程に影響を与えることなく臭気を低減できます。
複数の工程からの排気を集約して処理することで、処理設備の効率化とコスト削減を図ることも可能です。このように排気系統での消臭剤活用は、現場に負担をかけずに確実な臭気対策を実現できる手法として、導入実績があります。
消臭剤を用いた臭気対策は、適切な使用方法と継続的な管理により、効果を発揮します。一例として、実際の工場での測定データで、以下のような改善効果が報告されています。
消臭剤使用前後の臭気指数の変化例:
これらの効果を維持・向上させるためには、以下の点が重要となります。
消臭剤による対策は、初期投資を抑えながら効果的な対策が可能な方法として、多様な工場で導入実績があり、継続的な改善活動により、さらなる効果向上が期待できます。
臭気対策は、一度実施すれば終わりではなく、継続的な取り組みが不可欠です。生産条件の変化、原材料の変更、季節変動など、様々な要因により臭気の発生状況は変化するため、定期的な見直しと改善が求められます。
効果的な改善活動のためには、以下のようなPDCAサイクルを確立することが有効です。
段階 | 実施内容 | 具体的な活動 |
|---|---|---|
Plan(計画) | 現状分析と目標設定 | 臭気測定、苦情分析、改善目標の設定 |
Do(実行) | 対策の実施 | 消臭剤噴霧、設備改善、運用改善 |
Check(評価) | 効果の確認 | 定期測定、苦情件数の把握、コスト評価 |
Action(改善) | 対策の見直し | 運用方法の改善、新技術の導入検討 |
また、従業員の意識向上も重要な要素です。日常的な臭気チェック、異常時の迅速な対応、改善提案の促進など、全員参加型の取り組みにより、より効果的な臭気対策が実現できます。こうした取り組みを継続することで、工場全体の臭気管理レベルを安定的に向上させることが可能です。
タイヤ・ゴム工場の臭気問題は、硫黄系と有機系が混在する複合臭気という特性から、専門的な知識と経験にもとづいた総合的な対策が必要です。発生源の特定から適切な対策方法の選定、そして継続的な改善活動まで、段階的かつ体系的なアプローチが求められます。
無臭元は、1960年の創業以来、60年以上にわたって培った技術と経験を基盤に、タイヤ・ゴム工場をはじめとする多様な事業場の臭気問題の解決に取り組んできました。「1クライアント 1ソリューション」をモットーに、工場の特性や課題に応じた最適な対策を提案し、製造工程への影響に配慮しながら、効果的な臭気低減を実現します。
とくに、無臭元の各種消臭剤シリーズは、多くの工場で採用されています。排気ダクトなどへの噴霧装置と組み合わせることで、既存設備を活かしながら、即効性のある対策を施すことも可能です。
無臭元では、臭気測定から対策立案、導入、運用支援、そして効果確認まで、トータルでサポートいたします。近隣からの苦情対応、作業環境の改善、規制値への適合など、臭気に関するお悩みがございましたら、ぜひ無臭元までご相談ください。豊富な経験と確かな技術力で、お客さまの課題解決に貢献いたします。