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下水処理場の臭気対策。6つの発生ポイントと工程別対策事例

下水処理場の代表的な6つの臭気対策事例

課題

下水処理場では、原水・汚泥・脱水・搬出・排気など複数工程で臭気が発生しやすく、老朽化や住宅地近接も重なって、作業環境・近隣対応・管理負荷の面で計画的な臭気対策が求められている。

導入の効果

工程ごとに適した臭気対策を講じることで、臭気物質や不快臭の低減、作業環境や周辺環境の改善、さらに運用・維持管理負荷の軽減につながることが確認されている。

下水処理場の代表的な臭気対策事例一覧

下水処理場が抱える代表的な問題として臭気のお悩みが挙げられます。
施設から発生する悪臭は、施設内部の作業環境に影響を及ぼすだけでなく、周辺地域への影響や社会インフラとしての信頼性にも関わる重要な課題です。

本記事では、下水処理場の管理者様、下水処理の改修・更新を検討しているご担当者様に向けて、よくある下水処理場の臭気の発生ポイントと臭気対策の考え方について、簡易事例紹介を交えてご紹介します。

本記事で紹介する簡易事例は、代表的な臭気対策パターンを整理した総覧型の記事です。お客さま施設の条件により最適な対策方法は異なるため、対策検討の一助としてご参考ください。

下水処理場の課題と管理負荷の増大    

下水処理場において、臭気問題が顕在化しやすい背景として、まず臭気そのものが人の嗅覚に直接影響を与える「感覚公害」であることが挙げられます。そのため、汚泥処理を行う下水処理場では臭気の発生を避けにくく、とくに施設が住宅街の近くに立地している場合に、周辺住民の不快感や苦情として問題が表面化しやすくなります。

さらに、下水処理場全体の老朽化や設備更新の遅れも一因となり、既存の臭気対策設備が設計どおりの性能を発揮しにくくなるケースもあり、臭気問題を深刻化させる要因となっています。

日本の下水処理場では、機械・電気設備の多くが耐用年数を超えて老朽化している施設が多数存在します。

事実、総務省自治財政局準公営企業室が令和7年10月に発表した「下水道事業の現状と課題」では、下水処理場の機械・電気設備の標準耐用年数15年を経過した施設が全体の90%である約2,000箇所にのぼると発表しています。
▲出典:総務省「下水道事業の現状と課題

このままでは故障や処理効率の低下が起こり、管理負荷が増大する可能性も否定できません。

また、下水処理場の処理能力の問題として悪臭にかかわるリスクが顕在化し、作業環境や安全面への配慮が求められます。その結果、住民対応(苦情対応)や運転管理の負荷が高まりやすく、社会インフラとしての信頼にも影響し得るため、場当たり的な対応ではなく発生源を踏まえた計画的な臭気対策が重要となります。

下水処理場の臭気はなぜ発生するのか

臭気は原水・汚泥・脱水・搬出・排気など、複数の工程に発生源が分散しています。
このため、発生源を対策することが最も効果的な場合が多いです。

臭気の発生場所や原因となっている悪臭物質を特定するなど発生源を突き詰めることで、再発防止対策が講じやすくなり、継続的な改善にもつながります。また、長期的な運転管理の安定化にもつながるというメリットがあります。

下水処理場の臭気対策には6つのチェックポイントがある

下水処理場は、臭気対策と水処理対策の両面からの対応が求められる現場であり、無臭元が長年にわたり多角的な支援を行ってきた代表的な領域の一つです。

ここでは、下水処理場でよくある臭気発生ポイントを踏まえ、6つのチェックポイントとして整理します。包括的に臭気対策を実施する観点に立ち、施設の状況や課題に応じて臭気対策を選択・組み合わせることが重要です。

ポイント1:空間噴霧(流入口・最初沈殿池・濃縮槽上部における複合臭対策)

悪臭物質の特定が困難な流入口、初沈上部の悪臭に対して包接感覚中和系薬剤の噴霧を行います。敷地境界線対策や、悪臭の発生源が広範囲のため発生源対策が困難な場所に適しています。

課題

施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤の空間噴霧

効果

感覚的な臭気低減による作業環境の改善、近隣地域への臭気漏洩・放散状況の改善

適用対象

流入口・最初沈殿池・濃縮槽上部

使用薬剤例

噴霧用消臭剤(無臭元ライト)

噴霧用消臭剤(無臭元シルバー)

最初沈殿池および濃縮槽での空間噴霧対策例

ポイント2:コンベア粉末散布(し渣・沈砂対策)

滞留時間の長い、し渣・沈砂対策に関しては、ホッパーやコンベアに消臭剤を散布するアプローチが採用されることが多いです。

課題

作業環境・施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤のコンベア・ホッパーへの粉末散布

効果

感覚的な臭気低減による作業環境の改善、近隣地域への臭気漏洩・放散状況の改善

適用対象

し渣・沈砂

使用薬剤例

粉末消臭剤(ラバトリアンWP)

汚泥用消臭剤(無臭元FT-Z)

粉末消臭剤添加装置とコンベアへの消臭剤添加イメージ

ポイント3:汚泥ライン注入(硫化水素対策)

汚泥引き抜き配管に、各種消臭剤をライン投入します。汚泥脱水機周りの作業環境の改善から、搬出工程における臭気低減が期待でき、比較的長時間にわたり薬剤の効果も持続します。

課題

作業環境・施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤の汚泥ライン注入

効果

感覚的な臭気低減による作業環境の改善、近隣地域への臭気漏洩・放散状況の改善

適用対象

濃縮汚泥、貯留槽汚泥

使用薬剤例

汚泥用消臭剤(無臭元FV-M)

汚泥用消臭剤(無臭元FT-K)

汚泥用消臭剤(強力無臭元液CY)

汚泥ラインにおける消臭剤添加設備イメージ

ポイント4:液体噴霧(硫化水素対策)

コンベアやホッパー内に添加ノズルを用い、各種消臭剤を噴霧します。脱水ケーキホッパー内や搬出直前工程における局所的な臭気対策として活用されています。

課題

作業環境・施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤の液体噴霧

効果

感覚的な臭気低減による作業環境の改善、近隣地域への臭気漏洩・放散状況の改善

適用対象

脱水ケーキ、し渣

使用薬剤例

汚泥用消臭剤(無臭元FT-Z)

粉末用消臭剤(無臭元HS-500P)

噴霧用消臭剤の添加設備の設置イメージ

ポイント5:トラック上部噴霧(複合臭・硫化水素対策)

脱水ケーキ搬出時に、ホッパー上部より、各種消臭剤を噴霧します。搬出時に発生しやすい臭いの発生を低減します。

課題

作業環境・施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤のトラック上部噴霧

効果

感覚的な臭気低減による作業環境の改善、近隣地域への臭気漏洩・放散状況の改善

適用対象

脱水ケーキ、し渣

使用薬剤例

噴霧用消臭剤(無臭元ライト)

噴霧用消臭剤(無臭元楓)

粉末消臭剤(ラバトリアンGM-S)

脱水ケーキ搬出時におけるトラック荷台への噴霧イメージ

ポイント6:排出口噴霧(低濃度複合臭)

下水処理場の排気ダクトや煙突などの排気口では、低濃度の複合臭が敷地境界への影響につながる場合があります。こうした排気口からの臭気に対し、消臭剤を噴霧することで臭気の緩和を図る対策です。

課題

施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤の排出口噴霧

効果

感覚的な臭気低減による作業環境の改善、近隣地域への臭気漏洩・放散状況の改善

適用対象

排気口ダクト・煙突

使用薬剤例

噴霧用消臭剤(無臭元シルバー)

排気ダクト内を通る空気への臭気対策イメージ

以上が下水処理場における代表的な6つの臭気対策のチェックポイントです。

下水処理場の臭気対策では、実際の現場において「どの工程から確認すべきか分からない」といった相談を受けることが少なくありません。

ここで紹介した6つのポイントは、これまでの下水処理場における対応事例をもとに、臭気が発生しやすい工程や対策の考え方を整理したものです。

施設ごとに条件は異なりますが、臭気でお困りの際には、該当しそうな工程から順に確認することで、対策検討の糸口が見えやすくなります。

次章では、これらのポイントに基づき、実際に下水処理場で行われた工程別の対策事例と、その効果の現れ方を紹介します。

なお、臭気指数について詳しく知りたい方は、以下のコラム記事をご参照ください。
関連記事:臭気指数とは?規制の種類や対策についても解説

6つの臭気対策チェックポイントに関わる簡易対策事例

ここでは、上記で整理した6つのチェックポイントをもとに、実際の下水処理場で実施された対策事例と、その効果の現れ方について紹介します。

掲載の内容は、特定の施設における検証結果の例示であり、対策を実施する施設の環境や運用条件などにより異なる点にご注意ください。

①空間噴霧(流入口・最初沈殿池・濃縮槽上部における複合臭対策)

お客様名

A上水再生センター様

課題

流入渠周辺における強い臭気

対策

消臭剤の流入渠上部への噴霧

効果・目的

流入渠周辺環境の不快臭気の低減

推奨薬剤の効果確認テスト

適用対象

流入渠上部

最初沈殿池周辺

濃縮槽上部

使用薬剤

噴霧用消臭剤(ムシュウゲンAD111-SC)・20倍希釈噴霧

結果

ブランクおよび噴霧の両試験区において、改善度の上昇傾向が確認されました。(※運転条件や気象条件など外的要因の影響を含む可能性があるため、必ずしも噴霧の効果のみを示すものではありません。)

(以下は効果の可能性を示す参考情報としてご参照ください)


(2021年7月29日実施データ)

②コンベア粉末散布(し渣・沈砂対策)

お客様名

B下水道浄化センター様

課題

し渣・沈砂処理工程における強い臭気

※脱水工程を含む汚泥処理系

対策

消臭剤のコンベア粉末散布

効果・目的

脱水機内の脱臭を目的とし、汚泥脱水時における汚泥処理系の臭気対策として実施

適用対象

し渣・沈砂

使用薬剤

汚泥用消臭剤(無臭元B003-YZ)

結果

硫化水素、メチルメルカプタンにおいては、両方とも数値が減少。(※運転条件や季節条件などの外的要因を含むため、効果の現れ方は施設条件によって異なります。)

コンベア測定データ事例
(※以下データは効果の可能性を示す参考情報としてご参照ください。)

薬剤

測定値

無添加

硫化水素 13ppm~80ppm

メチルメルカプタン 2.2ppm~10ppm

200〜400ppm添加

硫化水素 検出限界以下

メチルメルカプタン 0.8ppm以下

(2001年5月23日実施データ)

③汚泥ライン注入(硫化水素対策)

お客様名

C循環センター

課題

汚泥ラインの強い臭気

対策

消臭剤の汚泥ライン注入

効果・目的

汚泥処理工程の臭気対策

適用対象

汚泥スラリー、脱水ケーキ

使用薬剤

汚泥混入型液体消臭剤(無臭元M023-FZ)

結果

脱水ケーキから発生する硫化水素・メルカプタンに対して、安定した効果を示唆。(※薬剤の添加量や運転状況、気象条件などによって、効果の現れ方は異なります。)

脱水ケーキ測定データ事例



採取直後

1時間後

3時間後

添加前

添加後

添加前

添加後

添加前

添加後

硫化水素

(ppm)

最大値

9.0

N.D.

2.0

N.D.

6.0

3.0

平均値

0.7

N.D.

0.1

N.D.

1.0

0.3

最小値

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

メチルメルカプタン類

(ppm)

最大値

20

20

20

18

50

50

平均値

5.8

6.6

6.3

4.6

12

8.3

最小値

2.0

2.0

1.0

1.0

1.0

1.0

(2010年7月20日実施データ)

硫化水素対策については、以下のコラム記事もご参照ください。
関連記事:硫化水素の臭いの特徴は?危険性や臭気対策、測定方法も紹介

④液体噴霧(硫化水素対策)

お客様名

D下水処理場

課題

脱水ケーキ搬出時の不快臭気の低減

対策

消臭剤の液体噴霧

効果・目的

脱水ケーキ搬出における臭気対策

適用対象

脱水ケーキ、し渣

使用薬剤

汚泥用消臭剤(無臭元FT-Z)

効果

すべて検出限界以下の数値が得られました。(※一例であり、改善傾向がある参考データとしてご参照ください。)

脱水ケーキ搬出時測定データ事例

薬剤および添加量

脱水直後

20分後

6時間後

24時間後


硫化水素

メルカプタン系

硫化水素

メルカプタン系

硫化水素

メルカプタン系

硫化水素

メルカプタン系

薬剤無添加

20

5

22

5

160

45

400

140

無臭元FT-Z 200ppm

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

N.D.

(2011年7月30日実施データ)

⑤トラック上部噴霧(複合臭・硫化水素対策)

お客様名

E処理場

課題

脱水ケーキ排出時のトラック上部より発生する臭気

対策

消臭剤のトラック上部噴霧

効果・目的

脱水ケーキ排出時のトラック上部より発生する臭気の抑制、ストックヤード内の臭気緩和

適用対象

脱水ケーキ、し渣

使用薬剤

噴霧用消臭剤(無臭元11D-98N)

噴霧用消臭剤(無臭元11D-142NC)

効果

測定項目(アンモニア)について、除去率80%の数値が得られた。(※運転条件や季節条件などの外的要因を含みます。また、夏場は臭気が強くなる傾向にあること、ノズルの定期点検も変動条件に含まれます。)

トラック上部測定データ事例


平均値

最高地

最低値

無添加

33.1

44

15

添加処理

6.3

9

3

除去率

81%

80%

80%

(2012年7月13日実施データ)

⑥排出口噴霧(低濃度複合臭)

お客様名

F終末処理場

課題

施設近隣への臭気の漏洩・放散

対策

消臭剤の排出口噴霧

効果・目的

最終排出口における臭気低減策

適用対象

排気口ダクト・煙突

使用薬剤

噴霧用消臭剤(無臭元シルバーTYPE1)・30倍希釈

効果

アンモニア測定の結果、最終排出口で10ppmから2ppmへの低減を確認。また、「臭気強度」が3.5から3.2に0.3ポイント低下、「快・不快度」は-2.3から-0.8へ1.5ポイントの向上が確認できた。(※特定条件下での測定結果であり、起因条件や気象条件などの外的要因を含みます。また、快・不快度は0が最も好ましい状態とされる指標の一つであり、感覚的な変化を把握するための参考値です)

最終排出口測定データ事例

設定条件

最終排出口

臭気強度

快・不快度

ノズル

希釈倍数

ブランク

10.0

3.5

-2.3

100

30

2.0

3.2

-0.8

(2012年12月17日実施データ)

現場での体感、日々の運用面での変化など効果の現れ方は、運転条件や処理状況、気象条件などによって異なる場合があります。そのため、上記結果は、各対策ポイントにおけるアプローチの考え方や効果の傾向を示す参考事例としてご覧ください。

実際に、臭気対策ソリューションを導入いただいたお客さまからは「臭いが弱くなった」「いままでの設備の改善も行い、維持管理運用に関わる作業が減った」「日々の運用ハンドリングがしやすくなった」など、さまざまなお声を頂戴しています。

目に見える数値はもちろんのこと、感覚的な不快感の低減や現場で働く方々の作業衛生環境の保全も無臭元はサポートいたします。

下水処理場で発生する臭気課題と向き合い続ける無臭元の知見

無臭元は1960年の設立以来、ニオイに関する課題と正面から向き合い、下水処理場をはじめとする水処理施設の臭気対策や排水処理の安定に携わってきました。

官公庁・自治体をはじめ、全国3,000箇所を超える現場での対応実績は、単なる製品提供にとどまらない「お客さまの事情に応じた幅広いソリューションの提案」を強みとしている結果と考えています。

無臭元の特長は、水処理施設における臭気トラブルについて、臭気だけの問題として捉えず、水処理工程全体を俯瞰し、運転管理の改善も含めて設計している点にあります。

微生物の働きに着目した活性微生物製剤の開発や各種消臭剤の開発など、水処理・汚泥処理・脱水・搬出・排気に至るまで、工程ごとの条件や制約を踏まえた対策を積み重ねてきました。

とくに下水処理場は、無臭元が最も長く関わってきた現場の一つです。

臭気と水処理が密接に関係するこの領域において、現場条件に応じた柔軟な提案と継続的なフォローを行い、環境衛生の改善に貢献しています。

排水処理施設における各種トラブル対応については、以下の記事もご参照ください。

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原因特定に至っていない段階でも、現場状況を踏まえた整理・診断が可能です

下水処理場の臭気対策は、発生源が多様な「複合課題」のため、原因特定が難しいケースが多く見受けられます。

原因がわからないために「どこから対策を考えるべきか分からない」「現行対策が適切化判断できない」といったご相談をいただくことも少なくありません。

無臭元では、まず現場状況や運転条件を整理するところから進め、課題の切り分けや優先順位の整理を行ったうえで、薬剤の選定や運用設計といった臭気対策ソリューションをご提案することが可能です。

排水処理施設における臭気対策・排水処理対策について、「原因整理がしたい」「現行対策の妥当性の確認をしたい」などでお悩みの場合は、専門的な視点での整理が有効です。

ぜひ一度、無臭元にご相談ください。

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